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このコースは灯台コースと同じように、いつ行ってもたくさんの草花で目を楽しませてくれます。それは地形が複雑で変化に富んでいるからでしょう。今はユリが真っ盛りで、なんといってもユリの王様にふさわしいのはヤマユリです。香りと大きな存在感と美しさです。中腹を越えると、点々とヤマユリ、クルマユリ、ウバユリ、クガイソウが咲いていて、しばらく行くとハグロソウの群生も見られました。登山口に向かう道の脇にはキツネノボタン、ダイコンソウ、カラスウリ,ヤマゼリなどがにぎわっていました。
セリ科であって、同じ2回3出羽状複葉の小さな5弁化の白花で見分けにくいのがあります。そこで葉で見分けるしかありませんが、ヤマゼリの葉は卵形で粗い鋸歯があり、シャクは披針形で細かく裂け、長い葉柄があります。ミツバは小葉が3出複葉ですぐわかりますが、ウマノミツバは外側の2枚がさらに深く裂け、5枚のように見えます。これは食べられません。以下は見られた花です。
ハグロソウ イケマ
オオウバユリ ヤマホタルブクロ
ツチトリモチ トウキ
カラスウリ ヤブデマリ
ヤマゼリ ヤマニガナ
クガイソウ ウシタキソウ
オトギリソウ キツネノボタン
オカトラノオ ダイコンソウ
この年の8月に新潟から他県へ移動しましたので、ここで、この連載は途切れますが、次に外国での観察、体験記録を掲載したいと思っています。
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平成28年6月22日 角田山湯の腰コース
多くの木本の花が目立ちました。イワガラミやヤマアジサイ、ヤブデマリ、オオバイボタ、ムラサキシキブ、マタタビの花が一斉に咲いていました。マタタビは葉の先が白く、それだとすぐわかりますが、大きくて、きれいな花が咲いていたのは驚きでした。ハナヒリノキの花は目立たなく咲いていて、マグワやニワトコの花は終わり、赤い実が沢山実っていました。登山道に至る脇はキツネノボタンが群生し、どこでも見られるドクダミの花も負けじと群生していました。
この時期に、木本で大きな白い5弁化の花を咲かせ、大きな実を結ぶのがマタタビ、サルナシ、少し早い時期に咲くヤマナシです。マタタビの葉は先が白く、細かい鋸歯で、サルナシの枝は褐色の毛があり、葉の鋸歯はとげ状、ヤマナシは重鋸歯です。実は、マタタビは淡黄色の楕円形、サルナシは淡黄緑色の広楕円形、ヤマナシは淡褐色の球形です。いずれも食べられます。以下は見られた花です。
オドリコソウ オカトラノオ
ヤマホタルブクロ マタタビ(花)
ヘビイチゴ(実) ハナヒリノキ(花)
トリアシショウマ ヤブデマリ
イワガラミ オオバイボタ(花)
キツネノボタン チダケサシ
ウツボグサ ニワホコリ
ヒヨドリバナ ニワトコ(実)
マグワ(実) ムラサキシキブ
オオウバユリ
夏も盛りになるとユリが一斉に咲きます。このコースはユリ類が多く、登山口には、オニユリが群生し、コオニユリ、クルマユリ、ヤマユリが所々に咲いていました。足元を見れば、クルマバナが群生しており、目線にはクガイソウ、オカトラノオが負けじと夏を競っていました。中腹に、小さくてあまり目立たない様子でコケイランが咲いており、宝物を得たような感じでした。
非常に小さくてわかりにくい花があります。同じ白花5弁花で2回3出羽状複葉のヤブジラミ、ヤブニンジン、セントウソウですが、葉で区別しやすいです。ヤブジラミの葉は卵状披針形で深く切れ込んでおり、ヤブニンジンは卵形で花柄が長く、セントウソウは倒卵形で中裂しています。また、ノミノツヅリとノミノフスマは同じ白花5弁花ですが、ノミノツヅリは花弁が裂けず、ノミノフスマは深裂します。葉は、ツヅリは5㎜と小さくて、がくは花弁より長く、フスマは葉は長細く、がくは花弁より短いです。どちらも対生です。以下は見られた花です。
オニユリ オニドコロ(花)
オトギリソウ ハナウド
カセンソウ コケイラン
コマツナギ ヤマホタルブクロ
ガンクビソウ クガイソウ
クルマバナ ツリガネニンジン
ヒヨドリバナ トリアシショウマ
キツネノマゴ カラマツソウ
ウリクサ コオニユリ
ヒメオウギスイセン
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平成28年6月1日 角田山稲島コース
初夏のこのコースは黄色の花が一斉に咲きます。登山道入り口にはコナスビ、ヘビイチゴの花、ジシバリ、オオジシバリが、登山道を登って脇を見ると、ニガナやハナニガナ、また、キツネノボタンやウマノアシガタが競い合っています。さらに、ここはヤエムグラ、ヨツバムグラなど、立ち止まってじっと見つめないとさっと通り過ぎてしまう花が多いでした。
イチゴ類は葉の形や花の色、がく片の形などが違っていて、それが見分けるポイントになります。どこでも多く見られるのがヘビイチゴで花は黄いろで、がくより副がく片が大きく目立ち、葉の形は卵形で先がとがらず、粗い鋸歯があります。クサイチゴは白い大きな花が咲き、葉は楕円形で細かい鋸歯があり、甘くておいしいです。ナワシロイチゴは花の色が赤紫色、がくは茶色で他のイチゴの花の色と違っていて、葉は不整な粗い鋸歯があります。それぞれ、どちらも3小葉です。下記が観察された花です。
ニガナ ヨウシャヤマゴボウ
ハナニガナ ウマノアシガタ
ジシバリ キツネノボタン
ヘビイチゴ アカネ
ナワシロイチゴ シオデ
コナスビ ハナウド
イヌガラシ ウツギ(花)
ハハコグサ トリアシショウマ
ヤエムグラ オドリコソウ
ヨツバムグラ
ちょうどこの時期、スカシユリを登山口に入る前の岩肌に点々と見ることができました。 これは、この時期を逃すとみることができません。これと同じように咲いていたのが、登山道に沿ってトリアシショウマやクルマバナ、ウツボグサなどで、トリアシショウマやクルマバナは群生していました。マメ科の植物ではナツフジやクララ、コマツナギで、ナツフジとクララは白い花が群生してきれいでしたが、なかなか見分けることができませんでした。
同じマメ科の蝶形花でもいろいろな種類があります。クララとナツフジは花の色は淡黄色ですが、クララは多年草で長楕円形の小葉が20対ほどある羽状複葉で、ナツフジはつる性木本で卵形の小葉が4~8対ある羽状複葉です。コマツナギとクサフジは同じように野原に咲きますが、コマツナギは花の色は淡紫色で小葉は卵形の羽状複葉で、クサフジは花の色は青紫色で小葉は線形の羽状複葉です。以下は観察された花です。
スカシユリ ナツフジ
エゾノキリンソウ ヤマアジサイ
カセンソウ イワガラミ
トリアシショウマ コマツナギ
クルマバナ クララ
ヒメヤブラン モミジバイチゴ
ヒョウタンボク(実)
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平成28年5月13日 角田山湯の腰コース
湯の腰は、登山口までの長い車道を車で通り過ぎてしまうことができますが、その車道の両脇に、季節によって種々様々の花が咲き、春には山菜がたくさん取れ、私たちを楽しませてくれます。この五月は、まず、カキドオシ、オドリコソウが群生し、所々にツルカノコソウも群生しています。キンポウゲ、ケキツネノボタンも黄色のアクセントをかもし出し、ツルキンバイは地表につるを伸ばして、同じ黄色の花を負けじと咲かせ、中腹には、完全に見落としてしまいそうな小さな白花のクルマバソウがけなげに咲いていました。
この時期に咲く黄色の花もなかなか見分けることが難しいものです。キンポウゲは花が大きく、鮮やかで葉は掌状に3~5裂します。キツネノボタンは花は小さく、3出複葉で小葉は2~3裂し、ツルキンバイは枝をつる上に伸ばし、葉は3枚の小葉でミツバツチグリの葉に似ています。ケキツネノボタンは茎や葉柄に毛が多いことです。以下は見られた花です。
オドリコソウ シオデ
カキドオシ ツルキンバイ
ケキツネノボタン クルマバソウ
ツルカノコソウ ラショウモンカズラ
ヘビイチゴ ツクバネウツギ
キンポウゲ ヤマツツジ
初夏、灯台に至る階段で、海岸を下に見渡すと、斜面に目にするのは砂浜に咲くハマナス、ハマエンドウ、ハマヒルガオなど赤やピンク、赤紫の花々です。手前の山を登るとテイカカズラやノイバラが群生し、岩場に至るとメノマンネングサも群生し、タイトゴメも所々に、にぎやかでした。何といっても一番の圧巻は、岩山の頂上にヤマツツジが一面に蔽っていたことでした。
ベンケイソウ科のマンネングサは多種ありますが、角田山で見られるのは岩場に生えるもので、メノマンネングサやタイトゴメ、オオベンケイソウなどがあります。メノマンネングサの葉は円柱状の線形で茎の高さは10センチぐらい、タイトゴメの葉は円柱状の小さな倒卵形で茎の高さは7センチぐらいです。同じ科のキリンソウは葉も大きく、茎の高さも30センチぐらいあります。以下は見られた花です。
ハマボッス トリアシショウマ
テイカカズラ タイトゴメ
ノイバラ コナスビ
メノマンネングサ ツルアジサイ
オオバナニガナ ニラ
オグルマ アサツキ
マンテマ ホタルカズラ
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平成28年4月27日 角田山稲島コース
この時期は登山口から登り始めると、春を代表するシャガとイチリンソウが群生して迎えてくれます。さらに、素通りになりがちになりますが、ミヤマケキマンやムラサキケマンが足元に咲き誇っています。中腹を登っていくと、よく観察しないととても小さくて見落してしまうコチャルメルソウ、ハルノトラノオの花が咲いていました。大きな発見でした。
同じトラノオでも種類が違う、私たちがよく目にする三種類のトラノオがあります。花穂が虎の尾に似ているということでその名前があります。ハルトラノオは春一番に咲き、茎の丈が15センチぐらいの小さな白い花を咲かせます。オカトラノオは夏に咲き、丈も1メートルぐらいあり、花穂も長く、先はやや垂れます。ヌマトラノオも夏に咲き、オカトラノオと大きさは同じぐらいですが、湿地に生え、花穂は直立します。同じく、白花です。下記は見られた花です。
ツルカノコソウ ヤアマハタザオ
コチャルメルソウ ムラサキケマン
ラショウモンカズラ マムシグサ
ナガハシスミレ ハルトラノオ
シラネアオイ シャガ
平成28年5月5日 角田山浦浜コース
この時期は夏の近さを告げる花がいっぱいです。ツクバネウツギやヤマツツジ、チゴユリは登る途中、所々に迎えてくれます。足元にはクサイチゴがいっぱいでおいしそうでした。それと、アマドコロ、ホウチャクソウなどのユリ科の花が目立っており、ホウチャクソウは群生していました。
ここで見分けがつきにくいのがアマドコロなどのユリ科の植物です。アマドコロとナルコユリは同じように葉のわきから花柄を垂らして花をつけますが、葉の幅はナルコユリは細く、披針形です。アマドコロの茎は角ばった稜があります。ホウチャクソウは茎の上部で枝分かれして、枝の先にだけ、花を数個咲かせます。下記は今回みられた花です。
クサイチゴ ツクバネウツギ
ツルカノコソウ ヤマツツジ
シャク ヒメコバンソウ
ヤワラスゲ チゴユリ
サワハコベ ダイコンソウ
イボタノキ(花) オドリコソウ
アマドコロ
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平成28年4月14日 角田山湯の腰コース
同じコースでも一か月も経たなくても見られる花が違ってきます。登山口をすぐ上ると、イチリンソウに代わって、ミヤマカタバミ、ニリンソウが一面に咲き、キクザキイチゲも目立ってきました。登山口の前の脇道では、ツルカノコソウやタネツケバナ、カキドオシ、シャガが群生して迎えてくれました。中腹を越えてよく見ると、目立たないのですが、ウスバサイシンが存在感を示していました。
春先にいち早く咲くのがツルカノコソウですが、カノコソウとよく似ています。違いは葉の形で、どちらも3~7片に全裂しますが、ツルカノコソウの頂葉は非常に長く目立ちますし、花が終わると、走出枝を伸ばして増えます。カノコソウの葉は粗い鋸歯です。今回、見られた花は以下のようです。
ケマルバスミレ アオイスミレ
ノミノツヅリ キクザキイチゲ
ツルカノコソウ ニリンソウ
ヤブジラミ コシノチャルメルソウ
ムラサキケマン カキドオシ
ヒトリシズカ シャガ
ウスバサイシン
前にここを登って2週間しか経っていませんが、植生は変わっていました。登山口を登るとすぐにゴヨウアケビが咲いていて、しばらく行くとホタルカズラが一斉に咲きだしていました。 桜尾根コースを下ると、ラショウモンカズラが群生、また、サンカヨウが一か所に集中していて、この時期を逃すと1年間は見られません。非常にラッキーでした。
この地域でよく見られるテンナンショウ属はマムシグサとウラシマソウです。ウラシマソウは釣り糸を跳ね上げたような形で、葉は1枚で掌状に分かれています。マムシグサは葉が2枚に分かれて掌状につき、花が終わった後は赤い実が付きます。見られた花は以下のようです。
ダイコンソウ ホタルカズラ
ムラサキハナナ トキワイカリソウ
アマドコロ エンレイソウ
ミヤマキケマン 桜尾根コース
ウラシマソウ ラショウモンカズラ
ミヤマカンスゲ アマドコロ
エチゴキジムシロ サンカヨウ
サンザシ ウラシマソウ
シャク
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平成28年3月23日 角田山湯の腰コース
暖かくなりだして、上を見上げると真っ先に垂れ下がって見えるのがキブシの花で、木いっぱいに黄色の花を咲かせるのがアブラチャン、道の脇にはモミジイチゴの白い花です。登山口を登り始めると、沢の縁にコシノチャルメルソウが見つかり、イチリンソウが春を告げていました。中腹を過ぎると、所々にエンレイソウが、また、ほとんど見落とさんばかりに可憐なキクバオウレンの花がありました。
この地域で見られるオウレンは、キクバオウレンとセリバオウレンです。花は同じですが、葉で見分けることができます。キクバは三出複葉でキクの葉に似ていますが、セリバは二回三出複葉で、葉はやや小さく、セリの葉に似ています。ここで見られた花は次の如くです。
ネコノメソウ キクバオウレン
ヤマネコノメソウ コシノチャルメルソウ
エンレイソウ キブシ(花)
モミジイチゴ(花) アブラチャン(花)
このコースは春の花で満開です。数種のエンゴサク類と数多くの種類のスミレ、数種のイチゲ類です。登山口を登るとすぐ、トキワイカリソウの群生、岩場にはミヤママンネングサ、エチゴキジムシロ、中腹を越えると、スミレのオンパレードです。白い花のヒカゲスミレ、日本海側でしか見られないスミレサイシンが圧巻でした。
この時期にきれいに目立っているイチゲ類は、キクザキイチゲ、アズマイチゲ、イチリンソウです。花の色はほぼ白いので、葉で区別するのが一番です。どれも三出複葉ですが、キクザキは葉が羽状に裂け、アズマはほとんど裂けず、イチリンソウは細かく裂け、ニンジンの葉に似ています。見られた花は以下のようです。
ヤマエンゴサク タチツボスミレ
ミチノクエンゴサク エンレイソウ
エチゴキジムシロ キクザキイチゲ
ヒカゲスミレ アズマイチゲ
ナガハシスミレ イチリンソウ
スミレサイシン ツルカノコソウ
オオタチツボスミレ